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佐々木譲の散歩地図

その夜、仲間たちが

少しだけ業界関係者とのつきあいの話題を。

19日は、直木賞の授賞式だった。この公式行事では多くの作家さんたちにあいさつしたが、そのあとの二次会三次会には、ずっと仲間づきあいしてきた同業者たちが参加してくれた。

個人名を全員出させてもらっても、たぶん問題は出ないと思う。
志水辰夫、船戸与一、逢坂剛、北方謙三、藤田宜永、大沢在昌、宮部みゆき、森詠、少し遅れて西木正明。

仲間の勢揃いだ。

ほぼ30年ぐらいのつきあいになる面々だ(宮部さんだけは、少し遅れて仲間づきあいさせてもらうようになったが)。つきあい始めた当時は、みな勢いだけはよかったが、まだ海のものとも山のものともわからなかった(北方謙三は言う。「おれは売れてた」)。

年齢差もかなりある。しかし、仲間うちに序列はない。

この関係の初期のころを想うとき、わたしはミュージカル『レント』もしくはオペラ『ラ・ボエーム』を同時に想い起こす。

あちこちの取材にも答えたが、お互いが遠慮なく、面と向かって相手の仕事ぶりについて批評し合える関係だった。つまり、もっとも恐ろしい読み手たちが、この仲間だった。この仲間の前で恥じねばならないような仕事はすまいと、絶えずみなの顔を意識しながらわたしは書き続けてきた。仲間のうちには、同じ想いだった者もたぶんいたはずだ。

この仲間たちが集まってくれてじつに感激だった反面、今後このメンバーが揃うことはあるのだろうかと、愛おしさに胸が苦しくなるような時間でもあった。

宮部さんがいみじくも言っていた。誰か親しい編集者さんの感慨だという。「遠くまできてしまいましたね」

「おれたちは、バウンティ・ハンターになるぞ」と船戸さんがかつて、冗談めかして宣言したことがある。
あれはいつのことだったろう。たしかにわたしたちは、不遜なバウンティ・ハンターとしても、遠くまできた。

こんな仲間のあいだでこの仕事を続けてこられたこと、それを心から幸福に感じた夜だった。

いま志水さんのHPを読むと、同じ話題について触れていた。
http://www9.plala.or.jp/shimizu-tatsuo/sub5kinkyouhtml.html
by sasakijo | 2010-02-21 12:38 | 日記