ここは佐々木譲が開設している備忘録ブログです。日々の暮らしと、本、映画について書いています。


by sasakijo

ウェルカム上海バンスキング

『上海バンスキング』十六年ぶりの公演を観る。於シアター・コクーン。

わたしはこのお芝居を、霞町にあった自由劇場での再演(八十年の三月)から観ている。九十年のシアター・コクーンでの公演のときは、観にゆく予定の日がわたしの推理作家協会賞の授賞式と重なってしまい、泣く泣く友人にチケットをやった。

大いに触発もされている。演劇評論家の松田政男氏には、『ベルリン飛行指令』は『上海バンスキング』へのオマージュ作品、とも喝破された。

なので、ほぼ初演時のオリジナル・キャスト(日によっては多少変わったようだ)での上演というこの公演は、夢のような時間の再来だった。

幕が開く前、客席でトランペットの音色。おや、と音のほうに目をやると、客席に立ち上がっている男がひとり。後ろ姿でもそれが笹野高史とわかる。主題歌『ウェルカム上海』のイントロ部分をソロで吹き始めたのだ。

続いて、舞台左袖に串田和美がクラリネットを吹きながら現れる。さらに客席からつぎつぎに管楽器を演奏しながら男たちが立ち上がる。大森博、小日向文世、真那胡敬二たち。その役者さんたちは全員舞台上(幕の前)へと上がり、前奏を終えたところで、やあやあと互いに握手する。

それはつまり同窓会の雰囲気。そうして「じゃあ、またあれをやろうか」と始まるのが、ジャム・セッションとしての舞台『上海バンスキング』、という設定なのだ。

あえて書くまでもなく、まどかは吉田日出子。

ただ、わたしにとってのこのお芝居の「正しい配役」は、リリーが余貴美子、ホァンさんは中村方隆。だけど、余貴美子は出ていない。中村方隆は二年ぐらい前に亡くなっているとか。この二点は残念だった。

(そういえば、ある年の公演で、大森博がバクマツを演じたことがあった。あれは、大冒険だったな)

ところどころ平成中村座を思わせる演出もあって、くすりとさせてくれる。最終公演からの十六年という時間を感じる部分。

舞台版『笑う警官』にも出てくれた若い役者さんと客席でばったり会った。意外そうなことを言うのでわたしは自慢した。「ずっと追っかけやってたんだよ」 彼はたぶん今回初めて観たはずだ。こんど感想を聞いてみたい。
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by sasakijo | 2010-03-04 23:38 | 日記