ここは佐々木譲が開設している備忘録ブログです。日々の暮らしと、本、映画について書いています。


by sasakijo

『五稜郭残党伝』舞台版

劇団さっぽろ函館公演『五稜郭残党伝』を観る。わたしの原作を、計良光範氏が脚色、演出した。休憩を入れて2時間40分の大作。於函館芸術ホール。

あらためて思うけれども、これはなんとも過激なメッセージ性を持った作品だった。若松孝二監督が映画化を企画した理由にも納得がゆく。舞台化に挑戦した劇団さっぽろに敬服。

自分の原作ながら、主人公たちがアイヌの青年シルンケと会うあたりから涙が止まらない。休憩のときはとてもきまりが悪かった。

中でやりとりされるアイヌ語はほんものだという。日本語の台詞をアイヌの方がアイヌ語に直し、役者さんたちが読んだものを録音してさらに発音を直したとか。アイヌの習俗の表現にも嘘はないとのことだ。

混血の美少女ヤエコエリカが、お芝居の最後に自分で口のまわりに入れ墨を入れる。死んだアイヌの青年シルンケの妻(未亡人)として生きることの誇らしげな宣言。彼女は言う。「シルンケ、約束する。わたしはあの島で立派な男の子を育てる」
恥ずかしながら、滂沱。

西部劇で言うキャンプファイヤー・トークの場面も、胸にしみた。わたし自身も、このシーンはこのように観せてもらいたかったのだ。


残党追討部隊を表現する音はバスドラム。暗転のたびにこのドラムが黒くまがまがしく響く。ラストには、ムックリの音を連想させるコントラバスの音色。ここまでこの音を使わない抑制も効果的だった。

アイヌたちの処刑というショッキングなシーンは、視覚的にはやはりきわめて抑制された表現。ここに流れるのが意外にもジャズ。「奇妙な果実」。ここで観客はこのお芝居が、いま現在とつながるコンテンポラリーな物語であることを意識する。

昨夜は興奮で眠れなかった。ただ、寿郎社の土肥さんもツイッターで書いているが、ベテランの俳優さんたちと学生さんたちの力量の差が大きかったのが残念。
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by sasakijo | 2010-08-14 22:56 | 日記