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by sasakijo

JR函館駅にある妄言

函館にJRで行ったのは久しぶり。かつての記憶とはずいぶん印象のちがったJR函館駅の通路で、奇妙な文句を見つけた。壁画の一部のようだ。

こう彫ってある。
「きのうの敵は あすの友
 箱館解放一八六八年
 二〇〇三 流政之」

「箱館解放一八六八年」って何のことだ? 明治元年に箱館(函館)は外国軍か圧政から自由になった?
榎本軍統治下の時代を嫌った箱館(函館)市民も多かったという。だからこれが「一八六九年」(明治二年)と記されていれば、それは箱館戦争の終わりを意味しているのだとわかる。

でも「一八六八年」。もしかして、明治維新のことを言っているのか?

しかし日本中の幕府直轄地の中で、明治維新を「解放」と表現する土地があるとは聞いたことがない。函館だけ特別に幕府が圧政を敷いていたとも聞かないから、この「解放」の意味がわからない。それとも函館市民は、明治維新を本気で「解放」と信じているのか?

明治維新や戊辰戦争について、歴史観の違いによる表現の差はあるだろう。でも、幕府直轄地で明治維新が「解放」であったというのは、歴史観の違いというよりは、妄言である。

「きのうの敵は あすの友」という文句も不可思議だ。ふつうは「きのうの敵は、きょうの友」という対句だろう。勝者の寛容、もしくは戦争の終わりを双方が歓迎し互いにわだかまりを捨てることを意味するフレーズ。でもここではあえて「現在はまだ友ではない」と強調しているわけだ。

なんのために慣用句をこのように変える必要があるのだろう。函館では、敵味方の区別はいまもなお厳然と続いており、市民はそれを是としているということか? 

最後の「流政之」という名。なんとなく聞いたことはあるが、どんな人物かよく知らない。なので検索してみたら「現代アーチスト」らしい。

函館駅のレリーフの言葉は、その彼の「文化人」としてのご託宣ということか。

JR北海道は、早めにあのお恥ずかしい壁画を撤去すべきだ。函館市民も、こういう人物のオブジェをありがたがっていてはいけない。個人がコレクションするのは勝手だけれど。
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by sasakijo | 2010-08-19 00:17 | 日記