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by sasakijo

弘前劇場『最後の授業』

弘前劇場の新作『最後の授業』を観た。

 3.11を題材にした、ストレートなメッセージのある作品。長谷川孝治の作品には珍しくも感じられたので、観終わったあとにいくつか長谷川孝治に確認してしまった。

 前作『素麺』も同じように3.11を題材にしていたというが、わたしは観ていない。『最後の授業』はこれと較べてペシミステックな印象が濃い、というのは、前作も観ているひとの言葉だ。

 たしかにこの作品の基調をなしているのは、「日本はもう終わる」あるいは「すでに終わってしまったのではないか」という苦い認識だ。夏休み前の私立高校の職員室の日常に、その認識がときおり鋭い亀裂のように走る。日常と見えているもののいくつかも、すでに終わっている。

 養護教諭役の小笠原真理子が、妊娠した姿で登場する。もう臨月。彼女は結婚しているのか、夫はどんな人物なのか、説明されないままに舞台は進む。福島、がキーワードであることが、ラスト近くになってわかる。小笠原真理子の妊娠をめぐる衝撃的な事実。その妊娠を祝福してよいのかどうかに、観客はとまどう。

 ラストは、窓の外にぎらつく真夏の光。蝉が鳴いている。麦わら帽子をかぶった教諭ふたりの、また日常的な会話。窓の外の光は、太陽光にしては強すぎるように思える。蝉の声。真夏。いやおうなく連想するできるものがある。やがてその光は強さを失い、窓の外はたそがれる。

 弘前劇場らしい台詞の応酬を楽しみつつ、重い問いかけに自分の認識を再確認する作品。
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by sasakijo | 2013-07-14 12:47