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by sasakijo

劇団・千年王國の『ローザ・ルクセンブルク』

劇団・千年王國の『ローザ・ルクセンブルク』を観た。作・演出は橋口幸絵。

 観る前、わたしよりふた回りも若い橋口さんが、ローザ・ルクセンブルクを取り上げるというのが意外だった。ローザは非業の死をとげた社会主義革命家であり、近代史好きには知られていても、けっしてポピュラーな人物ではない。最近の女性にファンが多い歴史上の人物とも聞いたことはなかった。

 あるいは橋口さんは、彼女の生き方にフェミニズムのひとつのモデルを見たのかとも予測していったのだけれど、はずれた。いや、その要素もあるけれど、これはストレートな革命のメッセージについての舞台である。きわめて今日的な問題意識に裏打ちされた政治劇である。 面白かった!

 ローザ・ルクセンブルクを四人の女優さんがリレーのように交替で演じてゆく。最初その演出意図がつかめなかったが、三人目の女優さんに代わったところで、これはひとつの肉体、ひとつの固有名詞の物語ではないとわかった。ローザ・ルクセンブルクは、平和と自由を希求する女性一般の象徴である。彼女は世界中のどこにでもいる。どの時代にもいる。五百年前のローザが出てきて、百年前のローザも出てくる。百年後のローザも登場する。

「百年後のローザ」(ローザ・ルクセンブルクの没年は1919年だ)という台詞が出てきたとき、ローザの悲痛な叫びは311に直接つながるメッセージとわかる。この作品は、311後の日本人が、百年前のローザの声に耳を傾けようとする試みである。それは同時に(アナルコ・サンジカリズム的社会主義者と評価されているローザをわざわざ取り上げる以上)、帝国主義とスターリニズムに替わっていまや地上の大半を覆うグローバル資本主義への、「ノン」の意思表示でもある。

 千年王國の舞台を観るのは二度目なのだけど、踊りとエスニック風の音楽(今回は馬頭琴が中心)の使い方がじつ巧みだ。とくにロシア革命を表現する群舞は圧巻。また、ワルシャワ労働歌の大合唱には、鼻水をすすらねばならなかった(そういう世代さ)。

 わたしは1991年にベルリンで、ローザとリープクネヒトの遺体遺棄現場という場所を訪ねたことがある。当時のベルリンの旅行案内には記述があり、現地には案内板もあった。たしか旧日本大使館跡から徒歩で行けた距離の運河畔。ところがローザの遺体をめぐっては最近、よくわからない情報が出てきているのだね。遺体は当時は本人のものとは確認されていなかったのか。
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by sasakijo | 2013-11-24 17:26 | 日記