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by sasakijo

柿喰う客『完熟リチャード三世』

吉祥寺シアターで、「柿喰う客」の女体シェイクスピア・シリーズ第7弾『完熟リチャード三世』を観た。
「柿喰う客」の公演は、去年『へんてこレストラン』を初めて観て、本作が二本目。

「柿喰う客」中屋敷法仁の作品は、セリフまわしが独特だ。日本語を非日常的なリズムに載せて(たぶん作品ごとにそのリズムを違えている。いや、シェイクスピア・シリーズは統一されているのかな)、一本の作品を(百パーセントではないが)それで通す。『へんてこレストラン』は短い作品だったので、そのリズムは作品のトーンを決めた要素として心地よく耳に残ったけれど、1時間20分の本作では、やや単調、と感じたな。感情の起伏やテンションの高低を強調しない演出であるし。

チェス盤のような板が敷いてあるだけの舞台。セットなし。小道具も使わない。きわめて抽象性の高い作品。もっと言えば、ステージの「幕」さえも、「幕」を描いた書き割りなのだ(道具幕、か)。最初から虚構性が強く主張されている。

でも、シェイクスピア作品を少人数の女性だけで演じるという試みは面白かった。黒いドレスの女優さんたち七人が、出ずっぱりなのだ。

リチャード三世の安藤聖以外は何役も割り振られているのだけど、ある女優さんが別の役として初登場するたびに、べつの女優さんが「新キャラクターです」と紹介するのがおかしい。シェイクスピア作品のわかりやすいダイジェスト、としても観ることができるのではないか。

リチャード三世は、青年(少年かも)のような年齢設定になっている。醜いために疎まれて育った青年が、家族、一族に復讐してゆく屈折の物語。

わたしは『リチャード三世』が好きで、『天下城』の本能寺の変の章ではセリフを引用した。ふつう「是非もなし」と言ったことになっている織田信長の最期のセリフを、「馬を持て! 天下をくれてやる!」としたのだ。知人の英文学の教授が、「あれは『リチャード三世』ですね」と見抜いてくれた。
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by sasakijo | 2015-02-15 23:00 | 日記