ここは佐々木譲が開設している備忘録ブログです。日々の暮らしと、本、映画について書いています。


by sasakijo

日曜の朝から

『チャイルド44』(トム・ロブ・スミス、新潮文庫、上下)をようやく読み終えた。

話題作であるし、何か言いたくなる作品でもあるのだが、ううむ。
スターリン体制下の連続猟奇殺人事件と、みずからの破滅も顧みずにこの事件に取り組む捜査官……。背景となる世界も興味深いし、素材も面白そうだった。でも、読後感はきわめて悪い。

一番の問題は、この作家が、スラブ人に対しても、ロシア社会に対しても、一片の共感も持っていないことではないだろうか。フリーマントルやマーティン・クルーズ・スミスを引き合いに出したくはないが。

視点の転換も目まぐるしすぎる。ときどき混乱する、というようなレベルではない。おおげさに言うなら、数行ごとに追跡者と追われる者との視点が入れ代わる。1行空けて節を分けることもせず。

読者はそのたびにつっかかり、当惑する。作者にはたぶん、視点、という概念さえない。初稿段階でなぜ編集者は指摘しなかったのだろう?

とても苦手なタイプのミステリ。 
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by sasakijo | 2009-03-15 10:47 | 本の話題