ここは佐々木譲が開設している備忘録ブログです。日々の暮らしと、本、映画について書いています。


by sasakijo

知床に住むプロ・ハンター

『羆撃ち』(久保俊治、小学館)
著者はアメリカのプロ・ハンター養成スクールを最優秀で卒業したひと。プロのハンターとは、大自然の中でアマチュア・ハンターのガイドもつとめるということである。狭い意味での狩猟技術だけではなく、乗馬やキャンピングも含んだアウトドア・ライフ全般についての高度なスキルも求められる。

著者は、現在は知床半島で肉牛を飼いながら、羆を撃つ。ただし、ハンティング・ガイドはやっていない。61歳。

本書の前半は、プロのハンターが生まれるまでの、ストイックな自己訓練と修行の物語、と要約できるだろうか。日本のアウトドア・マンにありがちな高慢なご託宣はない。手放しの野性讃歌も、都会人に対する侮蔑も、銃器に対する過度のフェティシズムもない。そうした意味では、日本では異色のアウトドア・マンの半生記である。しかも、アメリカの学校に入るぐらいのひとだから、著者は民俗学的な「猟師」ともちがった、いわば「近代人のセンスを持った」ハンターである。

後半は、愛犬との心の通い合いの物語。前半が男っぽい物語としたら、こちらのパートは涙を誘うストーリー。この部分だけファミリー向けの映画にもできそうだ。

じつを言うと、著者とは近所づきあいする間柄だ。長身、痩躯、長髪で姿勢のよい著者は、周囲のオヤジたちが嫉妬するほどに格好いい男性である(『シティ・スリッカーズ』という映画の、ビリー・クリスタルの目から見たジャック・パランスのようだ)。ギターを持ってブルースでも歌い出しそうな雰囲気があるが、音楽はまったく駄目だという。これはいまだに不思議に思えることなのだが。

北海道には、海上保安庁の南極料理人・西村淳さんに次いで、もうひとり、異能・異色のライターさんが生まれたのではないか、という気がする。


追記
北海道のひとなら、次のひとことを聞いて、あ、そうかと著者の具体像が浮かぶにちがいない。
久保さんは「大草原の少女みゆきちゃん」のパパである。
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by sasakijo | 2009-05-10 22:36 | 日記