ここは佐々木譲が開設している備忘録ブログです。日々の暮らしと、本、映画について書いています。


by sasakijo

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グループ虎とグループK

東京にいるあいだにお芝居2本。
『それはさておき恋はくせもの二の替わり』SPACE雑遊。
作・小松幹夫、演出は高橋征男(グループ虎)。わたしの原作舞台でお世話になっている石井ひとみさん、林真之介さん、久保田芳幸さんらの出演。ダンスは島明香さん、金刺航さん。

タイトルからは中身の想像はつかなかったのだけど、老人介護、老人虐待をテーマにした、かなりシリアスかつ同時代的なお芝居。この気分のまま劇場の外に出るのはきついなと思っていたら、最後に石井ひとみさんが歌い、島明香さんと金刺さんのダンスがあって、ふっと観客は舞台の世界観から抜けることができた。

もう一本は『スタンド・バイ・ユー』銀座みゆき館劇場。
香川耕二さんのグループKの公演。作・演出は湯澤公敏さん。やはりわたしの舞台作品によく出てくれている樋口泰子さん、福森加織さんらの出演。

主題はこちらも隣接していて、身内に先立たれた者の悲しみについてのお芝居。ただし、その実際の身内の死は、劇中劇の中に昇華されて、直接に前後の悲劇が描かれることはない。最後は若い未亡人となった樋口泰子さんの微笑だけが舞台の上に残って幕、という演出。全体の雰囲気は軽演劇というか、シチュエーション・コメディです。
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by sasakijo | 2015-11-23 20:13

弘前劇場『アザミ』

下北沢のスズナリで、弘前劇場・長谷川孝治『アザミ』再演を観てきた。
評判は聞いていたが、素晴らしい舞台。観る前にはどうしても弘前劇場の基本的なトーン「地方の日常の描写の中に、じっくりと人間ドラマが浮かび上がる」という作品を予想していたのだけれど、完全にはずれた。

そもそも、舞台となる土地は、そこそこの規模の放送局のある都市。後述する劇中の童話の舞台が青森なのだが、弘前劇場の多くの作品のようには方言は使われない。台詞(童話のテキスト)の中の桟橋、連絡船、待合室といった言葉は、たしかにいまやファンタジーのキーワードのように聞こえる。設定の抽象性は高い。

その街にある大学の、深夜の研究室。大学の講師であり、童話作家でもある中年男が主人公。彼をめぐる危険な関係の物語だ。登場人物は男女ふたりずつの四人。

出演は、村田雄浩、、伊勢美知花、小笠原真理子、林久志。脚本・演出は長谷川孝治。

深夜の研究室、作家が苦しみつつ童話を書き進め、これと並行して登場人物の関係が可視化され、そのからみあった関係の解決がはかられる。

去年の弘前劇場のドラマ・リーディングで演じられた作品、『港立裏町図書館』(正式のタイトルはちがった思う)が、劇中で主人公が書く童話、という構造になっている。その童話の、少女、図書館、老司書、という設定が、現実の、女子学生、研究室、中年の講師(作家)、という設定に対応している。

放送局の、作家を担当する制作担当者(小笠原真理子)の台詞。
「いつ、壊れたの、あなた?」
それを言ったあとの彼女の眼差しが、怖い。

ナイフをずっと目の前に突きつけられたような、サスペンスフルな舞台だった。
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by sasakijo | 2014-02-15 20:37

弘前劇場『最後の授業』

弘前劇場の新作『最後の授業』を観た。

 3.11を題材にした、ストレートなメッセージのある作品。長谷川孝治の作品には珍しくも感じられたので、観終わったあとにいくつか長谷川孝治に確認してしまった。

 前作『素麺』も同じように3.11を題材にしていたというが、わたしは観ていない。『最後の授業』はこれと較べてペシミステックな印象が濃い、というのは、前作も観ているひとの言葉だ。

 たしかにこの作品の基調をなしているのは、「日本はもう終わる」あるいは「すでに終わってしまったのではないか」という苦い認識だ。夏休み前の私立高校の職員室の日常に、その認識がときおり鋭い亀裂のように走る。日常と見えているもののいくつかも、すでに終わっている。

 養護教諭役の小笠原真理子が、妊娠した姿で登場する。もう臨月。彼女は結婚しているのか、夫はどんな人物なのか、説明されないままに舞台は進む。福島、がキーワードであることが、ラスト近くになってわかる。小笠原真理子の妊娠をめぐる衝撃的な事実。その妊娠を祝福してよいのかどうかに、観客はとまどう。

 ラストは、窓の外にぎらつく真夏の光。蝉が鳴いている。麦わら帽子をかぶった教諭ふたりの、また日常的な会話。窓の外の光は、太陽光にしては強すぎるように思える。蝉の声。真夏。いやおうなく連想するできるものがある。やがてその光は強さを失い、窓の外はたそがれる。

 弘前劇場らしい台詞の応酬を楽しみつつ、重い問いかけに自分の認識を再確認する作品。
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by sasakijo | 2013-07-14 12:47

ポランスキーが描けば

『戦場のピアニスト』(監督ロマン・ポランスキー)
あの『ブラックブック』の口直しとして観た。未見だったのだ。

第二次大戦中、ワルシャワでユダヤ人がどのような境遇に置かれてきたか、衝撃的なエピソードの積み重ねで見せる作品。しかし、ポランスキーは、描きかた次第でいくらでも派手にできたこの実話を描くのに、サスペンス演出もスペクタクル映像も排除する。主人公の非力なピアニスト、シュピルマンの視点だけで、その時代と、ゲットー蜂起、ワルシャワ蜂起という歴史的な事件を表現する。その抑制が見事。

また『ブラックブック』とはちがい、ここではユダヤ人社会内部の格差をも隠さずに描く。ゲットーには、金持ちユダヤ人と、ナチスに協力したユダヤ人と、貧しいユダヤ人と、飢えたユダヤ人がいたのだ。

『ブラックブック』では、下層のふたつのユダヤ人は描かない(時代から言って、すでにオランダでは死に絶えていた、ということであったのかもしれない)。逆に、金持ちの上にもうひとつの種類のユダヤ人がいたことを描く。つまり、才覚があって美貌の女、というユダヤ人。オランダで生き延びたのは、その層だけだった。

ワルシャワ蜂起のあとの廃墟となったワルシャワでシュピルマンがひとり生きる様子は、文明崩壊後の世界を描いたいくつかのSF映画を連想させる。シュピルマンの悲劇は人類の悲劇であるということだろう。なのでその世界を生き延びたシュピルマンは、映画のラストにいたっても、シオニズムという結論に飛びつかない。政治的に「覚醒」しない。その徹底した個人主義にむしろ観客は共感する、という作りだ。

未見だったことを後悔した映画。
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by sasakijo | 2009-05-12 23:26

崩壊感覚

明日から稼働、とは書いたけれども、PCの問題ではなく、むしろメンタルな問題で、執筆再開には至らず。何もしないわけにもゆかないので、溜まっていた雑事を処理する。悩まずにできる仕事。アンケートに答えたり、契約書にサインしたり、参加団体の理事選挙の投票をしたり。航空券、ホテルの手配なども。

ただ、新PCの導入のために、仕事部屋の模様替え、レイアウト変更もやってしまった。おかげで、それまで定位置のあったもろもろのものが見つからない。わたしの持っている時間、空間、関係の秩序について、このところちょっと崩壊してしまったという感覚があるな。
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by sasakijo | 2009-03-21 23:14
『ストックホルムの密使』新潮文庫(上下)が復刊されました。
長らく絶版でご迷惑をおかけしました。この作品で、いわゆる第二次大戦三部作は完結。この作品を読み終えると、三部すべてを通しての主人公は、彼、であったとわかります。


小林研一郎指揮で、オランダ・アーネム・フィルハーモニー管弦楽団を聴きに。
日本初演の、『地蔵』ケース・オルタウス作曲
グリーグ『ピアノ協奏曲イ短調op.16』ピアノ中村紘子
ムソルグスキー、組曲『展覧会の絵』

なんたって「炎のコバケン」、「メリハリ」ならぬ「メリメリの小林研一郎」。唸り声は聞こえる、指揮台の上で飛び跳ねる靴音も聞こえる、MCまでやってしまう。楽しいコンサートだった。

A席B席は売り切れだったはずだけど、かなり空きが目立った。でもSS席S席はほぼ九分の入り。
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by sasakijo | 2009-03-18 23:31

『笑う警官』初号試写

映画『笑う警官』の初号試写。
小島百合巡査が事実上の主人公の作品となっていた。主演は松雪泰子。全編背後にジャズが流れる、スタイリッシュな映画だった。原作者なので思い入れが強いせいか、あちこちのシーンで涙。

試写会場で、崔洋一氏にご挨拶。崔監督は、別の拙作の映画化を構想中。こちらも楽しみ。
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by sasakijo | 2009-03-10 22:32

サイン会のお知らせ

サイン会のお知らせ。
3月7日、午後2時から。札幌三省堂書店(札幌駅ステラ・プレイス、先日まで旭屋書店だったところ)の特設スペースにて。
『暴雪圏』(新潮社)刊行記念です。

悪筆なので、為書きはいたしません。ご了解ください。
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by sasakijo | 2009-02-26 15:24

7月のカフェ

a0019702_1467.jpg7月になりました。もう一年の半分が終わってしまったのですね。これはいけない。今年は新刊が3点の心づもりだったのですが。
ともあれ、きょうからは掲示板にはこちらをお使いください。
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by sasakijo | 2004-07-02 14:06