ここは佐々木譲が開設している備忘録ブログです。日々の暮らしと、本、映画について書いています。


by sasakijo

カテゴリ:日記( 113 )

『北帰行』(角川書店)の見本刷りが届いた。
『本の旅人』に連載したもので、474p。かなり束のある単行本。
奥付は今月末になっているけれど、今週後半には書店に並ぶかな。

警察小説ではなく、クライム・サスペンス。
ロード・ノベルにも分類できるかもしれない。

発想のヒントになった事件のひとつは、2001年に北海道・稚内市で起こっている。稚内に拠点を持つロシアン・マフィアのボスが射殺された事件。現場に居合わせたロシア人女性ふたりも重傷を負った。撃ったのはフランス国籍のヒットマンだった(未逮捕)。

また荒唐無稽な話を書いた、と思われたくないので、あえてこのことを記す。たぶん北海道以外では、ほとんど報道されなかった事件のはずであるし。
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by sasakijo | 2010-01-24 12:02 | 日記
『サードウォッチ』(制作ジョン・ウェルズ)第二シーズンを観終わる。

WOWOWで放映が始まったとき、何話かだけ観ていたシリーズ。そのときから、ニューヨークの現場系公務員(警察、消防、救急)群像劇であるこのシリーズのコンセプトに共感していた。

第一シーズンのDVDが出たときに買って観て、あらためてその質の高さに感嘆。先日(といっても半年ぐらい前になるのかな)第二シーズンのDVDが出たので購入、週に一話ぐらいのペースで観て、やっと観終えた次第。シーズン6まで制作されたシリーズだそうだけれど、日本でのDVD発売はこの第二シーズンまで。続きを観ることができないのが残念。

ジョン・ウェルズは大傑作テレビ・シリーズ『ザ・ホワイトハウス』のプロデューサーでもある。たいした人物だ。

第一シーズンの前半は、新人黒人巡査のデイビスの成長譚がメイン・ストーリーだったように思う。トーンも全体に明るめで、演出も少しコミカルなところがあった。でも後半からほかの登場人物たちのエピソードの比重が増え、少しずつシリアスさの度合いも増していった。

第二シーズンは、全体ではとても暗い。レギュラー登場人物である救命士のひとりは殺され、その射殺現場にいたもうひとりの救命士はPTSDから回復できないまま休職中。べつの救命士は女性医師との恋が破綻し、ひとりの消防士の結婚もあっという間に終わる。女性警官は生活苦から三人目の子供を中絶。偏見だらけで軽い青年警官も、その生い立ちの悲惨さを明らかにされる。

シーズンの最終エピソードは、中学生による銃乱射事件。いじめが理由とはっきり示される。珍しく、ストレートな社会批判の台詞で終わった、救いのない話だった。

とりあえず事件は一話ごとに解決する。あるいは決着をみる。でも、さほど大きなカタルシスがあるわけではない。むしろ、やりきれなさを感じる終わりかたのほうがはるかに多いという作り。だからといって、不満を感じさせることはなかった。

シーズン最終話を観終えたあと、強いお酒を少しだけ飲みたくなった。DVDを止めたあと、近所の静かなバーの片隅でシーズン全体のエピソードを思い起こしながら一杯、というのが、理想的だったかもしれない。近所に適当なバーなんてない、というのが、舞台であるマンハッタンとこことの違いであるが。
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by sasakijo | 2010-01-11 22:21 | 日記

来年は芝居づく年

舞台版『笑う警官』公演成功を受けて、来年もお芝居への関わりが続く年になりそうだ。

『笑う警官』演出の高橋征男は、グループ虎(メンバーがみな虎年生まれ)というお芝居制作のユニットの代表格なのだけれど、わたしも一応「座付き小説家」という立場。『新宿のありふれた夜』は、実を言えばグループ虎のために書いた小説なのだ。

『笑う警官』公演が成功だったことで、さっそく高橋征男と次作の打ち合わせ。彼は来年10月、俳優座劇場でオリジナルの芝居を打つのだけど、素材は箱館戦争。スペクタキュラーなお芝居にしたいということで、『五稜郭残党伝・異聞』のような原作を書いてくれないかと打診された。

前にもご案内したとおり、『五稜郭残党伝』は劇団さっぽろが舞台化することになっている。今年は間に合わなかったので、たぶん来年の上演。わたしとしても、箱館戦争をめぐる物語はまだまだ書いてゆきたいと思っている。なのでお芝居の原作として、もうひとつ『箱館戦争異聞』を書き下ろす。日本近代化の理念と精神とを問う物語だ。

最初から舞台的演出を想定する小説なので、もしかすると少しファンタジーの要素が入った作品になるかな。
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by sasakijo | 2009-12-21 14:46 | 日記
舞台版『笑う警官』の公演が終わる。
ネットでのレビューは一件目にしただけだけど、お客さんの反応は悪くなかったように感じた。好評、盛況だったと言ってよいのだろう。

原作のジャズバーのマスターを、ママに変えた設定が成功している。ママは、内部告発した嫌疑をかけられて拳銃自殺した安田という警官の未亡人。自殺したその警官は、主人公佐伯警部補の道警音楽隊での仲間同士。つまり、佐伯が津久井巡査部長を救い、彼を百条委員会に届けようとする行為には、同僚を自殺に追い込んだ組織上部への私怨を晴らすという目的もある。

佐伯の越軌行動は、弔い合戦でもあるのだ。しかし佐伯のその私怨は、佐伯自身からは語られることはない。

佐伯のこの未亡人への想いもデリケートであり、ママもまた死んだ夫の同僚であった佐伯に対して、はっきりと慕情を感じている。つまり舞台版『笑う警官』は、佐伯宏一、小島百合、ママ(中野若葉、役名は順子)の三人の大人の、淡く危うい三角形のラブストーリーでもある。

ママ役中野若葉さんが何度か佐伯に向ける切ない視線には、胸が苦しくなった。

原作では、小島百合巡査は、小柄で剣道有段者、姿勢がよく、勝気、ときどきドジ、という設定のキャラクターだった。樋口泰子さん演じる舞台版の小島百合巡査は、この原作イメージにほぼ沿っている。映画版のクール・ビューティ松雪泰子さんとはまたちがった魅力。


再演を期待しよう。
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by sasakijo | 2009-12-21 14:18 | 日記

弘前劇場の新作

先日、弘前劇場『アグリカルチャー』を観た。作・演出、長谷川孝治。

青森版『桜の園』と書いたら失礼になるかな。

青森のとあるリンゴ農家の一族の物語。舞台はその農家の土間。その家は大学に隣接しており、下宿人も置いている。学生や大学関係者もその家の土間に気軽に現れる。その登場人物たちの津軽弁をまじえた会話を楽しんでいるうちに、その一家には秘密が、封印された悲劇が、あるとわかってくる。

家の外には樹齢百二十年のリンゴの老木があることが繰り返し言及される。観客はやがてそのリンゴの老木は、家父長的権威の象徴であり、一家の悲劇の「現場」である、と理解する。

観客が一家の秘密と悲劇のおおよその事情を察したラスト近く、舞台の外からはチェーンソーの音が響いてくる。薪割りの得意な長男が、リンゴの老木を切り倒したのだ。チェーンソーの響きは一家の世代交代を告げる音であり、古いイエが死んだことの暗喩だ。

ラスト、大テーブルを囲んで、登場人物たちができたばかりのカレーライスを食べ始める。そこにはすでに父親の姿はなく、長男は結婚、その若い妻は身ごもっている。血縁ではない者たちをも含めた、大家族が出現している。絆のありようを変化させた、新しい共同性の誕生。

タイトルから、農業と農村礼賛のメッセージ性の強い作品だろうかとも予想していたのだけれど、ちがった。また、長谷川孝治は農業と農家(と、たぶん農村社会)とを、厳格に切り離して見つめている。青森「土着」のリンゴ農家の物語ではあるが、作品全体は「養蜂家=移動する農業者」の視点から対象化されているという構造なのだ。

最後に出現する「大家族」には、「地域劇団」の理想も託されているのではないかと思う。

一家の長女は一度東京に出て教師と結婚し、その夫(休職中)と共に実家に帰ってきているという設定。この夫婦の着ているいかにも軽薄な素人漫才用ペア・セーターが、ラストでは農作業用ツナギに変わる。これを、生活に立脚した表現、についての確信の宣言、と観るのは深読みか?
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by sasakijo | 2009-12-06 22:37 | 日記

韓国語版エトロフ

『エトロフ発緊急電』(新潮文庫)の韓国語版見本刷りが届いた。

わたしの作品の韓国語訳は、『警官の血』に続いて二作目。

『エトロフ発緊急電』では、金東仁(日本名・金森)という朝鮮半島出身の人物がきわめて重要な役を受け持つ。主人公のミッション達成の主要動機のひとつが、彼の存在。

NHKテレビ・ミニシリーズ『エトロフ遥かなり』では、この金東仁を新宿梁山泊の金守珍さんが演じた。戦慄すら感じるくらいの名演だった。

『エトロフ発緊急電』、韓国ではどんなふうに読まれて、どのように評価されるのだろう。
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by sasakijo | 2009-12-02 13:13 | 日記
『一箱古本市の歩きかた』(南陀楼綾繁、光文社新書)
2005年から、東京のいわゆる谷根千エリアで始まった一箱古本市。現在はほうぼうの地方都市で、これにならったイベントが実施されているのだという。本書はこの一箱古本市のオルガナイザー、プロデューサーである著者による古本市のレポート。

一箱古本市は、扱い商品を本に特化したフリーマーケットであるから、たぶんこれ以前にも似たようなイベントは各地にあったにちがいない。関西のある町では、リュックサック古本市、のような催しが続いていると、ある街おこしのレポートで読んだことがある。しかし、本好きたちのネットワーク化を意識的に追求したイベントとしては、著者たちが育ててきたこの一箱古本市が画期的なのではないか。

じつを言うと、谷中千はわたしのもうひとつの「地元」なのだけれど、いつもタイミングが悪く、このイベントを体験したことがない。この地によく似合ったイベントと思うが。

レポートされている各地の古本市のうちでは、高遠の『高遠ブックフェスティバル』に強く惹かれる。高遠をイギリスの古本の町ヘイ・オン・ワイのような「本の町」にしようと始まったイベントなのだという。同時開催される企画も多彩だ。足を運ぶ価値がありそうな催し。アトラクション次第では、行ってみたいと思う。

本と本をめぐる世界への愛に満ちた、気持ちのよいレポートだ。
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by sasakijo | 2009-11-19 23:30 | 日記
鳩山由紀夫総理の言葉だから、ほとんど考えもなしに出たものかもしれない。著作権保護期間の70年への延長に最大限努力するという発言。

しかし首相がJASRAC創立70周年のパーティに出席して挨拶すること自体、強い意味を持っているか。この団体は先日、某全国紙にも全面広告を載せていた。ロビィ活動にもかなりの予算を投入しているということなのだろう。

民主党政府は彼らにあっさり説き伏せられるほど愚かではないと信じたいが。
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by sasakijo | 2009-11-19 22:10 | 日記

悲鳴

雑事続きで更新は当分できそうもありません。

(この日記は番頭がアップしました)
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by sasakijo | 2009-11-07 01:26 | 日記
ハンガリーの見知らぬひとから、eメールがきた。

彼は1982年に、わたしの原作の映画『鉄騎兵、跳んだ』を、ハンガリー語版で観たという。このときのハンガリーでのタイトルは『Honda Knights』というものだったとか。

彼はこの映画のビデオかDVDを兄弟の誕生祝いにプレゼントしたいのだそうだ。どうしたら手に入れることができるか検索していて、わたしのホームページに行き着いた。

あの映画、セルビデオは出ていたけれど、にっかつには在庫はあるのかしらん。DVD化はされていないはず。さて、せっかくの問い合わせだし、なんとかできる範囲のことはしてやりたいが。

ハンガリーでは、『ベルリン飛行指令』が英語版から翻訳される予定のはずだ。意外な国にわたしの読者が増えてくる。わたしのホームページも、全面更新すべき時期かな。
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by sasakijo | 2009-10-26 20:42 | 日記