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by sasakijo

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弘前劇場『アザミ』

下北沢のスズナリで、弘前劇場・長谷川孝治『アザミ』再演を観てきた。
評判は聞いていたが、素晴らしい舞台。観る前にはどうしても弘前劇場の基本的なトーン「地方の日常の描写の中に、じっくりと人間ドラマが浮かび上がる」という作品を予想していたのだけれど、完全にはずれた。

そもそも、舞台となる土地は、そこそこの規模の放送局のある都市。後述する劇中の童話の舞台が青森なのだが、弘前劇場の多くの作品のようには方言は使われない。台詞(童話のテキスト)の中の桟橋、連絡船、待合室といった言葉は、たしかにいまやファンタジーのキーワードのように聞こえる。設定の抽象性は高い。

その街にある大学の、深夜の研究室。大学の講師であり、童話作家でもある中年男が主人公。彼をめぐる危険な関係の物語だ。登場人物は男女ふたりずつの四人。

出演は、村田雄浩、、伊勢美知花、小笠原真理子、林久志。脚本・演出は長谷川孝治。

深夜の研究室、作家が苦しみつつ童話を書き進め、これと並行して登場人物の関係が可視化され、そのからみあった関係の解決がはかられる。

去年の弘前劇場のドラマ・リーディングで演じられた作品、『港立裏町図書館』(正式のタイトルはちがった思う)が、劇中で主人公が書く童話、という構造になっている。その童話の、少女、図書館、老司書、という設定が、現実の、女子学生、研究室、中年の講師(作家)、という設定に対応している。

放送局の、作家を担当する制作担当者(小笠原真理子)の台詞。
「いつ、壊れたの、あなた?」
それを言ったあとの彼女の眼差しが、怖い。

ナイフをずっと目の前に突きつけられたような、サスペンスフルな舞台だった。
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by sasakijo | 2014-02-15 20:37