ここは佐々木譲が開設している備忘録ブログです。日々の暮らしと、本、映画について書いています。


by sasakijo

『昭和残侠伝』全作鑑賞

『昭和残侠伝』シリーズ9本をDVDで集中的に観た(このうち3本は、公開当時にも観ていた)。

資料として観始めたつもりだったが、せっかくだからまとめて寸評を記そう。データはWikipediaから。


第1作『昭和残侠伝』(1965年10月1日公開)
o 監督:佐伯清、脚本:村尾昭、山本英明、松本功
o 出演:高倉健、池部良、三田佳子、江原真二郎、松方弘樹、梅宮辰夫、他

昭和21年の浅草マーケット利権をめぐる抗争。「帰って来た青年が共同体を救う物語」
とにかく明るい。戦後復興に賭ける群像劇で、多少任侠映画風味、というところか。真っ昼間の青空と鳩が映し出される「希望」と「解放」のラストは、シリーズ中でもこの一作だけ。

また、時代設定を戦後にしているのもこの作品のみ。ほかはすべて昭和初期という設定である。
このシリーズは、コンセプトが決まらないままに制作開始となったのだろう。

三遊亭円生の江戸弁が耳に心地よい。



第2作『昭和残侠伝 唐獅子牡丹』(1966年1月13日公開)
o 監督:佐伯清、脚本:山本英明、松本功
o 出演:高倉健、池部良、三田佳子、津川雅彦、三島ゆり子、芦田伸介、他

宇都宮、大谷石の採掘利権をめぐる抗争劇。
穂積ペペがジョーイ少年となる『シェーン』だ。台詞の引用も多い。しかし全体はコメディと観たほうがよい。マカロニ・ウエスタン風味もある。

池部良の登場シーンでは、観客は当時吹き出したのではないだろうか。
レギュラーの山本麟一が、珍しく敵方ヤクザの駄目な二代目、ひまなときは綾取りをしているという男。



第3作『昭和残侠伝 一匹狼』(1966年7月9日公開)
o 監督:佐伯清、脚本:松本功、山本英明
o 出演:高倉健、池部良、藤純子、島田正吾、扇千景、他

銚子が舞台。漁業権をめぐる抗争劇なのだが、なぜか妙に重苦しい。悲劇的、とはちがう重たさ。
また、全体に汚れた、薄汚い、という印象がある。様式から逸脱しているせいだけではないと思うのだが。



第4作『昭和残侠伝 血染めの唐獅子』(1967年7月8日公開)
o 監督:マキノ雅弘、脚本:鈴木則文、鳥居元宏
o 出演:高倉健、池部良、藤純子、津川雅彦、金子信雄、加藤嘉、他

東京・浅草が舞台。建設利権抗争が、火消したちのまといをめぐる争いに移って、暴力が解放される。たかがシンボルのためにあの殺戮か、という想いはあるが、シンボルに振り回される文化体系の悲劇であるとも言える。秀次郎はヤクザではなく、堅気(鳶職・火消し)。



第5作『昭和残侠伝 唐獅子仁義』(1969年3月6日公開)
o 監督:マキノ雅弘、脚本:山本英明、松本功
o 出演:高倉健、池部良、藤純子、待田京介、志村喬、他

傑作。公開当時にも観ている。
主要登場人物の三角関係が、もっとも前景化している作品。第2作に似て『シェーン』の引用もある。藤純子の「抱いて」という台詞は、マリアン(ジーン・アーサー)の「Hold me」という台詞に対応している。

舞台も第2作と同じ宇都宮・北大谷。
シリーズ全部を観てわかったが、池部良のやさぐれ感のもっとも強いのがこの作品。というか、池部良はほかの作品ではむしろ、ほとんどが清潔感のある役柄なのだ。



第6作『昭和残侠伝 人斬り唐獅子』(1969年11月28日公開)
o 監督:山下耕作、脚本:神波史男、長田紀生
o 出演:高倉健、池部良、片岡千恵蔵、大木実、小山明子、他

浅草と玉の井が舞台。労働者や堅気がほとんどからまない、正統任侠(ヤクザ抗争)映画。ホームドラマ色も濃い。継母に反発する未熟な若者の成長がサブストーリーとなっている。

殴り込んだふたりがふたりとも生き残って警察に捕縛されないのは、これだけ。傷ついた重吉を秀次郎が支えて、雪の道の先へ消えてゆくラストもいい。公開当時、ここで「異議なし!」の声が飛んだことだろう。



第7作『昭和残侠伝 死んで貰います』(1970年9月22日公開)
o 監督:マキノ雅弘、脚本:大和久守正
o 出演:高倉健、池部良、藤純子、加藤嘉、中村竹弥、長門裕之、他

シリーズ最高傑作。これも封切りで観た作品。
小さな作り、しかも様式美の極限とも言いたいほどの端正さ。舞台は深川。

芸者の藤純子が、ヤクザの親分に手込めにされかける。これを救出する料理人、秀次郎、重吉の機転と呼吸は、胸がすく痛快さ、美しさ。名場面だ。

秀次郎、重吉、ふたりの殴り込みの理由は「共同体を救うため」というよりも、渡世人の過去から逃れられない宿命の受容である。悲劇性はシリーズ中もっとも強い。

秀次郎が、自分の裸の胸に死んだ重吉の顔を抱え込む官能的なラスト。ふたりが肌を接触させる描写はこれ一作のみ。
このシリーズのふたりの殴り込みが「道行き的」であるとは初期から言われていたが、この作品ははっきりとそれを認めている。



第8作『昭和残侠伝 吼えろ唐獅子』(1971年10月27日公開)
o 監督:佐伯清、脚本:村尾昭
o 出演:高倉健、池部良、鶴田浩二、松方弘樹、松原智恵子、他

公開時にも観ている。
股旅道中もの。親友同士が逃げる者と追う者とに分かれるドラマ。

前橋、追分、金沢と舞台が移ってゆく。一宿一飯の作法が丁寧に描写される。追跡側の秀次郎は、かつての親友ビリー・ザ・キッドを追うパット・ギャレットと重なる。



第9作『昭和残侠伝 破れ傘』(1972年12月30日公開)
o 監督:佐伯清、脚本:村尾昭
o 出演:高倉健、池部良、鶴田浩二、星由里子、北島三郎、安藤昇、他

シリーズの終了やむなしを思わせる作品。秀次郎の盟友の安藤昇の組は、人身売買を手がけている。後に対立することになるとはいえ、そういう稼業のヤクザと主人公をつるませるのはまずかろう。また、北島三郎が博打好きで、自分の妹まで売ってしまうような馬鹿。こんな男に振り回される秀次郎たちには、どうにも共感しづらい。
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# by sasakijo | 2010-09-23 13:05 | 日記
9月25日、『カウントダウン』が、毎日新聞社から刊行されます。

毎日新聞社の雑誌『本の時間』に連載した『二度死ぬ町』の改題作品。「死ぬ」という語が内容に反してネガティブ過ぎるので、この改題となった次第です。

舞台は北海道のとある架空の旧産炭地。ボス市長の六選を阻もうと、市長選に立候補する若い市議の物語。

わたしは三年前、財政破綻した北海道・夕張市を長期取材していますが、このときの取材をもとにしています。自分の作品の系列でいうと、『愚か者の盟約』に通じる作品でしょう。ポリティカル情報小説です。

北海道大学教授で公共政策学が専門の宮脇淳先生に、監修をお願いしました。
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# by sasakijo | 2010-09-16 13:29 | 連絡
舞台版『婢伝五稜郭』のスタッフ、出演者顔合わせ。打合せ。
わたし、自分の原作の舞台化でもこの時点から関わったのは初めてだ。

出演者は43人。『笑う警官』『新宿のありふれた夜』に出てくれた俳優さんたちも四分の一くらい。殺陣は内堀克利さんとそのグループ10・Quatre。何度も大立ち回りがあるという。

演出家の高橋征男が最初のあいさつで言う。
「ひとことでジャンルを言うのは難しいけれど、スタイリッシュな現代の歌舞伎です。エンターテインメントです」
「テーマとメッセージを背負うのは、ふつう主要な登場人物だけだけど、この芝居ではコロスもテーマとメッセージを背負うので、そういう心づもりで」

台本第一稿を読んだ。脚本家(秋山豊さん)は、旅芸人一座が目撃した箱館戦争の一部始終、という構成を採っている。

また、『婢伝五稜郭』だけを基にしているのではなく、わたしの幕末維新関連作品の再構成となっている。なので『武揚伝』『くろふね』『五稜郭残党伝』『北辰群盗録』それに『黒頭巾旋風録』などの、いわば名場面集の趣もある。

台本は、このままでは上演に4時間ぐらいかかるのではないかと思えるような長さ。たぶんここから大胆なカット、省略がおこなわれるのだと思うが。

中島三郎助父子の千代ガ岱陣屋での戦死の様子、榎本武揚の降伏を告げる演説とそのあとのラ・マルセイエーズの合唱に送られて五稜郭を出る情景などが、舞台上に再現される。わたしはきっとこのあたりで涙を流してしまうだろうな。

さらに、主役・朝倉志乃(樋口泰子さん)が、和服を榎本軍の旧幕府伝習歩兵隊の軍服に着替え、私怨の殺人者から共和国の戦士に変貌するところも見せ場だろう。

わたしは13日初日を観にゆく予定。


舞台版『婢伝五稜郭』
10月13日から17日まで。東京六本木・俳優座劇場。
チケット予約・問い合わせは
現代制作舎 電話03-3482-3383、ファクス03-3482-3387
チケットは前売り5000円、当日5500円。全席指定
http://goryoukaku.jimdo.com/
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# by sasakijo | 2010-09-07 21:21 | 日記

JR函館駅にある妄言

函館にJRで行ったのは久しぶり。かつての記憶とはずいぶん印象のちがったJR函館駅の通路で、奇妙な文句を見つけた。壁画の一部のようだ。

こう彫ってある。
「きのうの敵は あすの友
 箱館解放一八六八年
 二〇〇三 流政之」

「箱館解放一八六八年」って何のことだ? 明治元年に箱館(函館)は外国軍か圧政から自由になった?
榎本軍統治下の時代を嫌った箱館(函館)市民も多かったという。だからこれが「一八六九年」(明治二年)と記されていれば、それは箱館戦争の終わりを意味しているのだとわかる。

でも「一八六八年」。もしかして、明治維新のことを言っているのか?

しかし日本中の幕府直轄地の中で、明治維新を「解放」と表現する土地があるとは聞いたことがない。函館だけ特別に幕府が圧政を敷いていたとも聞かないから、この「解放」の意味がわからない。それとも函館市民は、明治維新を本気で「解放」と信じているのか?

明治維新や戊辰戦争について、歴史観の違いによる表現の差はあるだろう。でも、幕府直轄地で明治維新が「解放」であったというのは、歴史観の違いというよりは、妄言である。

「きのうの敵は あすの友」という文句も不可思議だ。ふつうは「きのうの敵は、きょうの友」という対句だろう。勝者の寛容、もしくは戦争の終わりを双方が歓迎し互いにわだかまりを捨てることを意味するフレーズ。でもここではあえて「現在はまだ友ではない」と強調しているわけだ。

なんのために慣用句をこのように変える必要があるのだろう。函館では、敵味方の区別はいまもなお厳然と続いており、市民はそれを是としているということか? 

最後の「流政之」という名。なんとなく聞いたことはあるが、どんな人物かよく知らない。なので検索してみたら「現代アーチスト」らしい。

函館駅のレリーフの言葉は、その彼の「文化人」としてのご託宣ということか。

JR北海道は、早めにあのお恥ずかしい壁画を撤去すべきだ。函館市民も、こういう人物のオブジェをありがたがっていてはいけない。個人がコレクションするのは勝手だけれど。
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# by sasakijo | 2010-08-19 00:17 | 日記
舞台版『婢伝五稜郭』のチラシが出来上がったようだ。わたしの手元にはまだ届いていないけれど、出演者さんのひとりのHPにはもうアップされていた。

http://ameblo.jp/wakamiho/entry-10586605290.html
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# by sasakijo | 2010-08-15 18:48 | 連絡

『五稜郭残党伝』舞台版

劇団さっぽろ函館公演『五稜郭残党伝』を観る。わたしの原作を、計良光範氏が脚色、演出した。休憩を入れて2時間40分の大作。於函館芸術ホール。

あらためて思うけれども、これはなんとも過激なメッセージ性を持った作品だった。若松孝二監督が映画化を企画した理由にも納得がゆく。舞台化に挑戦した劇団さっぽろに敬服。

自分の原作ながら、主人公たちがアイヌの青年シルンケと会うあたりから涙が止まらない。休憩のときはとてもきまりが悪かった。

中でやりとりされるアイヌ語はほんものだという。日本語の台詞をアイヌの方がアイヌ語に直し、役者さんたちが読んだものを録音してさらに発音を直したとか。アイヌの習俗の表現にも嘘はないとのことだ。

混血の美少女ヤエコエリカが、お芝居の最後に自分で口のまわりに入れ墨を入れる。死んだアイヌの青年シルンケの妻(未亡人)として生きることの誇らしげな宣言。彼女は言う。「シルンケ、約束する。わたしはあの島で立派な男の子を育てる」
恥ずかしながら、滂沱。

西部劇で言うキャンプファイヤー・トークの場面も、胸にしみた。わたし自身も、このシーンはこのように観せてもらいたかったのだ。


残党追討部隊を表現する音はバスドラム。暗転のたびにこのドラムが黒くまがまがしく響く。ラストには、ムックリの音を連想させるコントラバスの音色。ここまでこの音を使わない抑制も効果的だった。

アイヌたちの処刑というショッキングなシーンは、視覚的にはやはりきわめて抑制された表現。ここに流れるのが意外にもジャズ。「奇妙な果実」。ここで観客はこのお芝居が、いま現在とつながるコンテンポラリーな物語であることを意識する。

昨夜は興奮で眠れなかった。ただ、寿郎社の土肥さんもツイッターで書いているが、ベテランの俳優さんたちと学生さんたちの力量の差が大きかったのが残念。
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# by sasakijo | 2010-08-14 22:56 | 日記
劇団さっぽろの函館公演『五稜郭残党伝』を観に行きます。
函館芸術ホール。

8月13、14日と連続公演ですが、わたしは13日の回に行く予定。原作者として、舞台あいさつもあるだろうと思います。
http://gekidan-sapporo.com/default.aspx
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# by sasakijo | 2010-08-10 14:29 | 連絡

リンドバーグに花束を

一族の法事。
これまで聞いたことのなかった面白い話を聞いた。

リンドバーグへ再が北太平洋横断飛行の途中(昭和6年、1931年)、エトロフ島紗那に給油で立ち寄ったとき、通訳をつとめたのが祖父・佐々木千代太郎のいとこだったという。
このとき叔母たちは、花束作りをおこない、歓迎セレモニーで花束を贈呈したのだとか。

リンドバーグ夫妻とエトロフ島政府関係者との記念写真は残っている。リンドバーグの後ろ左側に写っている乗馬ズボンの男性が、その祖父のいとこ。
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# by sasakijo | 2010-08-08 19:39 | 日記

お詫び

10月7日刊行予定であった『婢伝五稜郭』(朝日新聞出版)、刊行が来年1月に延びました。
佐々木の執筆の遅れによるものです。関係各位には10月刊行予定で作業にかかっていただいておりましたが、無駄になってしまいました。誠に申し訳ありません。

舞台版『婢伝五稜郭』は予定どおり10月13日から17日まで、東京・俳優座劇場での上演です。刊行をこの上演に間に合わせたかったのですが。
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# by sasakijo | 2010-08-05 09:54 | 連絡
劇団さっぽろによる『五稜郭残党伝』函館公演、函館での稽古が始まりました。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki2/244751.html

記事中、関係者の言葉として
「史実とは違う歴史観を函館の舞台で感じてほしい」という。
とある。

関係者はたぶん「官軍史観とは違う歴史観」と言ったはず。記者は「官軍史観」イコール史実と信じて疑ったことがないのだろう。
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# by sasakijo | 2010-08-04 17:42 | 連絡