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佐々木譲の散歩地図

残された者たちのジャズ

劇団人間座復活第一弾公演を観た。
『日輪 あるいは夜の曳航』、清水周一作。
出演は松橋登、江間直子、石井ひとみ、近童弐吉、阿部由輝子ら。

60年代末に初演された作品だという。なるほどたしかにあの時代のアングラ演劇の雰囲気が残った舞台だ。白塗りのダンサーたちの舞踏。海の妖精たちの詩的な台詞…。

しかし演出の高橋征男は、この作品の再演を引き受けるにあたって、オリジナルの台本を大胆に再構成したらしい。「アングラ風味」はかなり薄味になっているのだろう。

ジャズ・バンドの男女四人の、「関係の真実」が作品の中心テーマ。舞台は三浦半島あたりの港に係留された外洋クルーザー。同じジャズ・バンドの面々が、オフの日を過ごすために、その船にやってくる。そのバンドにはかつて、天才的な女性ボーカリストが参加していたのだが、彼女はほかの四人の関係を変え、その突然の死によってまた残された者たちの関係を振り回した。

五木寛之の短編のひとつを想起させるし、大江健三郎の初期の作品にも似た雰囲気のものがあった。関係が少しずつ明らかになり、さらにまたそれが否定されてゆく過程はスリリングだった。

舞台上にじっさいにジャズ・バンドとして登場するのは、B-HOT CREATIONS。


この舞台を観た前後に、高橋征男らと10月の俳優座劇場公演の原作打ち合わせ。
by sasakijo | 2010-03-14 22:16 | 日記