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佐々木譲の散歩地図

ようやく真空管アンプ


とうとう真空管アンプを入れた。クラシックのアナログ・レコードを、よりいい音で聴こうと。

アナログ・レコードの音はよい、というのは、CDが登場したときから言われていたことだ。しかし、再生装置が高価なものになる。手軽に聴くなら、CDだった。

ところがこの十年くらいか、低予算でクラシックCDを聴くなら真空管アンプ、と、よく聞くようになった。いっときとちがい、安価な市販真空管アンプも多くなったのだ。

かたいっぽうで、そのCDを聴くという音楽の聴き方自体が、時代後れになりつつあるようだ。音楽は圧縮データをダウンロードしてMP3プレーヤーで聴くというのが、若い世代の一般的な音楽鑑賞スタイルになっている。

わたしはこのMP3プレーヤーで聴く、という方法にどうしてもなじめない。とくにイヤホンで聴くことが。音のよしあし以前に、集中できない(試したことはあるのだ)。

わたしにとって音楽を聴くとは、なによりコンサートに行くこと、であり、次善の策として、コンサート会場に近い音を再現できる機器で聴くことだ。

また本と同様で、好みの音楽については、集めたい、という気持ちが働く。蔵書が読書記録であると同時に自分の表現となるように、音楽の「記録」のライブラリーを豊かにしてゆくことは、音楽を聴くことと一体の喜びだ。ところがデータをダウンロードしてメモリーに蓄積することでは、その喜びはあまり感じられないのではないか。

自分の残り時間を考えると、いまさら新しい記録方式でライブラリーを作り直すのもむなしい。あと15年くらい再生機器がもつなら、わたしは古い記録方式のソフト・ライブラリーを古い技術で聴き続けるので十分だ。わたしにとって、そのことは心地よい。不便でも不都合でもない。

さいわいアナログ・レコードを真空管アンプで聴くことは、いまはけっしてハイエンド・オーディオマニアの贅沢すぎる趣味ではなくなっている。かつては手の出なかった音が、いまは手の届くところにある。

ごく少量ながら、復刻版ソフトのリリースも続いている。さらに今後は、クラシックのLPレコードを手放すひとが増えてくる。ソフト探しでもあまり苦労はしないですむだろう。

というわけで、真空管アンプでアナログ・レコードを聴く、ために環境を整えた次第。期待以上のいい音。正解だった。
by sasakijo | 2010-05-02 18:34 | 日記