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佐々木譲の散歩地図

写実表現の最高水準

『存在の美学』という美術展を観た。
野田弘志とその愛弟子の永山優子、廣戸絵美の同人展。正式名称は、「伊達市噴火湾文化研究所同人展」。伊達市の、だて歴史の杜カルチャーセンターで。招待作家は石黒賢一郎、小尾修、塩谷亮、西房浩二、水野暁の五人。

野田弘志は北海道壮瞥町にアトリエを持ち、伊達市で写実絵画の教室を開催している。永山優子はいまは野田の助手ということになるのかな。教室の名は「野田・永山塾」だ。

2007年に、北海道立近代美術館が、野田弘志の大規模な特集展を開催した。このときわたしは初めて、ロープを描いたシリーズを観たのだけれど、ある意味写実絵画の極北を目指している、とも言うべきあのシリーズは今回は出展されていない。動物の骨を描いたものもなかったな。伊達市近辺の風景画が2点、白人女性像が1点。

展示作品は少ないながら、招待作を含めて、日本の写実絵画の最高の水準を観たという想いにさせてくれる美術展だ。長い時間向き合っていたい作品ばかり。とくに石黒賢一郎の手術室を描いた作品は刺激的だった。

展示を観たあと、野田・永山塾のある伊達市噴火湾文化研究所にも行ってみた。ここには野田弘志絵画コレクション・ルームがあり、事実上のミニ個人美術館となっている(ここにも、ロープのシリーズはなかった)。

係のひとに案内してもらって、子供向けの塾と大人向けの塾のふたつのアトリエも見学。さらに野田弘志のモチーフ保管室も見せてもらったことで、野田弘志の創作の秘密の一端に触れた想いだ。野田弘志の再現アトリエなどもあるといいのに、と欲張りなことも考えてしまった。

7月20日まで。伊達市だて歴史の杜カルチャーセンター1階ハーバーホール、無料。
by sasakijo | 2010-07-15 09:17 | 日記