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ヤンキーの起源

更新の間が開きすぎるのもいやなので、簡単に。

『ヤンキー文化論序説』(五十嵐太郎編・著、河出書房新社)

最近、このテーマでたしか新書も出たはず。ヤンキー論ブームが始まるのかもしれない。ただし本書でも、「ヤンキー」とは何なのか、きちんと定義されていない。それは階層なのか? 文化なのか? またそれは「終わった」のか? それともまだ生きているのか? 本書では宮台真司以下十七人が論考を発表しているが、彼らのあいだでもまだ共通の認識はできていないようだ。

それでも、「ヤンキー」と名付けてなんとなく納得できる何かがあることは確かだ。タイトルにあるとおり、これは「序説」。これから、たとえばオタク論のように、このテーマについて多くの論者やメディアが語りだすことになるのだろう。

ひとつ、本書を読んでいて思い出した小説。
『けんかえれじい』(鈴木隆)、いま手元にないので、版元はあとで調べて付記。鈴木清順の映画の原作。
(付記、いま岩波文庫版が出ていた。わたしが持っているのは、たぶん理論社版。上下二巻)


これは戦前の岡山と会津が舞台、硬派の旧制中学生の喧嘩に明け暮れる青春記なのだが、中でひとりの友人が学生服の背(裏地?)に派手な絵を描いたエピソードがあった。彼の級友たちはその行為を「あいつがとうとう飛ばした」(うろ覚え)と称賛するのだ。旧制中学生というインテリ予備軍(卒業後都会に出る子も多かったろう)の青年たちの話なので、社会階層に差はあるが、突っ張りという行動様式には共通性がある。美意識も、ほとんど通底していると言ってよいのではないか。

なので、わたしの仮説。ヤンキーのルーツは意外に古い。けっして戦後のものではない。ましてや、キャロル=矢沢永吉あたりを発祥と見るのは間違い。それはたぶん戦前にすでに存在していたが、社会一般からは無視されていたのだ。顕在化したのが、七十年代。
by sasakijo | 2009-04-22 23:10 | 日記