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佐々木譲の散歩地図

話が通じるのはオージー

定点観測しているニセコで、オーストラリア人実業家ふたりと話す機会があった。

さすがにリーマン・ショック以降の世界的景気後退は、オーストラリア人投資家のニセコへの投資熱をすっかり冷やしてしまったという。おふたりとも、事業を三分の一の規模に縮小して、景気回復を待つ態勢。しかし、ニセコの未来像についてじっくり考えるいい機会だと、いまのこの不況にも縮みこんではいない。

ひとり、Bさんは、農業法人を設立、念願の農地を手に入れたそうだ。観光以外でも、ニセコと北海道を世界的なブランドにしたいのだという。

Sさんは、香港、マレーシア、シンガポールなどをまわる長期出張から帰ったばかり。景気回復については好感触を得てきたようだ。

Sさんの自宅や、開発物件を見せてもらったが、景観に配慮し、しかもチープさのない、魅力的なリゾート開発。この水準の開発が主流になるなら、たしかにニセコは極東のウィスラーにもなれる、という気がする。

ニセコは早い段階で、Sさんのようなひとを、開発のコンサルタントにしてもよかったのではないかとさえ思う。もっとも、ロス・フィンドレー氏に対しても「あとから来ていいとこ取りしたオージー」と陰で言っているような土地柄だ。夢想に過ぎないが。

環境にせよ、景観にせよ、北海道の将来像にせよ、こういうひとたちのほうが話が通じる、と思えるのが、少し悲しい。

そのあたりの空気については、連作短編集『廃墟に乞う』(文藝春秋、7月末刊行予定)の中の、『オージー好みの町』で少し触れた。
by sasakijo | 2009-05-24 22:14 | 日記