せっかくのサイトですので、あらためて情報を投稿していくようにします。
連載のお知らせ。
いま、次の三作品を連載中です。
『裂けた明日』
近未来SFサスペンス。
Foresight(電子版雑誌。新潮社)
毎週土曜日更新。講読すると、第一回から読むことができます。
『闇の聖域』
野性時代(電子雑誌。KADOKAWA)
三十年代の満洲・大連を舞台にしたSFサスペンス。少しホラーテイストのミステリでもあり、禁断のラブストーリーでもあります。
『樹林の罠』
ランティエ(角川春樹事務所)
北海道警察シリーズの第10弾。札幌大通署の佐伯ら、第1作からおなじみのメンバーが活躍する警察小説。
伊豆・韮山に取材に行っていました。
記念館である江川邸を訊ねるのは二度目。学芸員さんから、話を伺ってきました。
韮山代官・江川太郎左衛門英龍についての歴史小説『英龍伝』単行本化作業のためです。『英龍伝』は日経BP誌にかつて連載したものですが、単行本とするには原稿の量が少し足りず、加筆作業も後回しになっていました。いよいよかかります。『英龍伝』の刊行で、わたしの幕末幕臣三部作は完結します(三部作というのは、榎本武揚を描いた『武揚伝』、中島三郎助が主人公『くろふね』と、この『英龍伝』)。
…
三人とも、技術に明るい幕臣であることが共通しています。
江川英龍は行政官ながら、測地術に詳しく、砲術家でもありました。韮山に反射炉を作って、銃や大砲の製造を手がけています。よく知られている品川のお台場(砲台)の設計、築造も彼の事績。
中島三郎助は浦賀奉行所与力で、ペリーと最初に接触した日本人であり、日本で初めての洋式帆船を建造したサムライです。長崎海軍伝習所に学び、航海術や造船術、蒸気機関学を習得しています。箱館戦争の最終局面で息子ふたりと共に戦死。
榎本武揚は、長崎海軍伝習所に学び、さらにオランダに留学、造船術や蒸気機関学のほか、国際法も学んで帰国した男。江川英龍の江戸屋敷でオランダ語を学び、ジョン万次郎が江川英龍手付として召し抱えられてからは、彼から英語を学んでいます。
日本の近代化は、倒幕側の「志士」たちによって進められた、というイメージがありますが、じっさいにそれを営々と準備していたのは、とくにこうした技術系の幕臣たちであり、進取の気風に富んだ職人たちでした。彼らは酒をくらいつつ天下国家を論じるのではなく、まず謙虚に西洋に学び、みずから手を動かし、モノを作って、日本の近代化への道を固めていたのです。
小説の「幕臣三部作」とは別に、わたしは三人の生涯についての啓蒙書も書いています。
『幕臣たちと技術立国』(集英社新書)
残念ながら品切れ。
新史料も出てきているし、ほんとうならこの新書も改訂版を出したいところです。
2013年に温泉ドラゴンの『birth』ソウルでの公演をお芝居仲間と観にいった。このとき打ち上げで、パク・クニョンさんともお酒を飲んでいる(同行した我らが女優さんにすっかり惚れ込んだ様子だったが、我らの演出家も負けじとパクさんの劇団コルモッキルの女優さんに熱心に出演を迫っていたっけ)。
韓国で上演すればこの作品はストレートな「一族の歴史」ものだけれど、シライケイタはこの原作の設定を逆転させ、台詞を完全に日本人のものに置き換えてしまった。すると、この舞台上の日本はかつて韓国の植民地であり、独立したけれども南北に分断され、ベトナム戦争にも参加した歴史を持つ、という国になる。ある種のパラレル・ワールドものという言い方もできるかもしれない。
ところが観ているうちに、この作品はパラレル・ワールドものというよりは、アクチュアルな近未来もののように見えてくる。韓国の近・現代史が、いま予想しうる日本の明日そのものではないかと思えてくるのだ。たとえばアメリカ軍後方支援で外国に派遣され精神を病んだ帰還兵の姿は、いまやけっして他人事ではない。
シライケイタ演出により、おそらくは原作者の意図を超えてヘビーな問いかけを持つことになった舞台。
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