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ここは佐々木譲が開設している備忘録ブログです。日々の暮らしと、本、映画について書いています。


by sasakijo
札幌座『霜月小夜曲』((ノヴェンバー・セレナーデ)。作・演出・音楽は斉藤歩。

 二年前に初演された『霜月小夜曲』のうれしい再演。札幌座のレパートリー演目に加わった名作をまた観てきた。

 北海道・宗谷地方の農村が舞台。高校時代、演劇少女だった三人の女性が、二十五年ぶりに再会する。ひとりは高校の教諭となって道内各地を転勤する人生。もうひとりは国内はもとより中東から南米までを流転した。
 ひとりは農家の青年と結婚して地元で生きた。その彼女の夫となった同級生の不可解な失踪事件と死が、三人の関係に影を落とす。
 三人を演じるのは、宮田圭子、林千賀子、吉田直子。劇団の創立メンバーだという。劇中に流れた二十五年という時間は、彼女たちが女優として生きた時間にも重なるのだろう。

 斉藤歩は、この作品では徹底して「地方」のありようを凝視する。北海道の農村の現在を見つめる。北海道の郡部に生きるひとびとの出自と、生きかたの根拠を問う。
 重要な小道具として使われているものは「豆」だ。ラスト近くで、ハイブリッドの豆の収穫が語られる。移民たちの子孫同士の結合によるあらたな「種」の誕生の暗喩なのだろうか。大量流通は不可能で、商業主義にもなじまない品種。しかし遠くからの遺伝子を受け継ぎ、新天地の痩せた土壌と過酷な気候にも耐えて生育してきた作物。その思いがけない交配種、道産子の新世代。

 ラスト、主人公三人がチェーホフ『三人姉妹』のそれぞれの台詞を引き受けて語る。時間は彼女たちに、その台詞をすっかり内面化させた。台詞は彼女たち自身の肉声となった。
 正直言うと、初演のときよりも今回のほうが、この部分に揺さぶられた。二度目なので、主人公三人への共感がより深くなったせいだろう。
 作品のテーマを簡潔な言葉に託した劇中歌『霜月小夜曲』も印象的、効果的だ。斉藤歩のオリジナル。
 
 今年の「札幌演劇シーズン」開幕作品だが、このあと北海道各地でも公演されるほか、東京公演もある。東京の観客には、これだけ「地域性」を強調した作品はどう受け取られるのだろう。
http://www.h-paf.ne.jp/sapporoza/schedule.html
# by sasakijo | 2013-07-21 09:43 | 日記

弘前劇場『最後の授業』

弘前劇場の新作『最後の授業』を観た。

 3.11を題材にした、ストレートなメッセージのある作品。長谷川孝治の作品には珍しくも感じられたので、観終わったあとにいくつか長谷川孝治に確認してしまった。

 前作『素麺』も同じように3.11を題材にしていたというが、わたしは観ていない。『最後の授業』はこれと較べてペシミステックな印象が濃い、というのは、前作も観ているひとの言葉だ。

 たしかにこの作品の基調をなしているのは、「日本はもう終わる」あるいは「すでに終わってしまったのではないか」という苦い認識だ。夏休み前の私立高校の職員室の日常に、その認識がときおり鋭い亀裂のように走る。日常と見えているもののいくつかも、すでに終わっている。

 養護教諭役の小笠原真理子が、妊娠した姿で登場する。もう臨月。彼女は結婚しているのか、夫はどんな人物なのか、説明されないままに舞台は進む。福島、がキーワードであることが、ラスト近くになってわかる。小笠原真理子の妊娠をめぐる衝撃的な事実。その妊娠を祝福してよいのかどうかに、観客はとまどう。

 ラストは、窓の外にぎらつく真夏の光。蝉が鳴いている。麦わら帽子をかぶった教諭ふたりの、また日常的な会話。窓の外の光は、太陽光にしては強すぎるように思える。蝉の声。真夏。いやおうなく連想するできるものがある。やがてその光は強さを失い、窓の外はたそがれる。

 弘前劇場らしい台詞の応酬を楽しみつつ、重い問いかけに自分の認識を再確認する作品。
# by sasakijo | 2013-07-14 12:47
シアターzooで、札幌座(TPSあらため)の新作公演『ブレーメンの自由』を見てきた。演出は弦巻楽団の弦巻啓太。

斉藤歩演出ではない札幌座って、どんなものだろうとかなり不安を感じつつ席に着いたのだった。自分に合うと感じる劇団や演出家にひとつ出会うために、これまでどれだけの「はずれとの遭遇」が必要だったか。それを考えたら、この不安にも理解をもらえるだろう。

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの戯曲の舞台化。弦巻啓太は、この作品を、観客の感情移入を徹底的に拒絶するように演出する。俳優さんたちも、翻訳調の日本語の棒読みと取れる台詞回し。かなり意識的な「でくのぼう」のようなお芝居。それでも緊張に目が離せなくなる。

演出家の意図は、情念抜きに台詞の(言葉の)意味だけを伝えようということなのだろう。おかげで、ゲーシェという19世紀初頭のドイツ人女性の犯罪の様相が、普遍性のある「女性人権活動家の悲劇」として昇華されている。

札幌座のファンにはどうしても先生の役柄イメージの強い(わたしだけの偏見か?)宮田圭子さんが、ある意味のラディカル・フェミニストを出ずっぱりで演じる。その孤高な闘いぶりの恐ろしいまでの美しさ。観客の共感を拒む演技だけれども、ときおり見せる激情に、観客は戦慄する。主人公の絶望の深さを知る。

いやはや、自分の好みとは全然ちがうテイストのお芝居だったけれども、楽しんだ。しばらくひとり、バーでお酒を飲んで、気持ちを鎮めて帰ってきた。
# by sasakijo | 2013-06-30 16:24 | 日記
2012年11月6日(火)から16日(金)まで、東京両国のシアターΧ(カイ)で、わたしの原作による舞台を3作集中公演します。全体のタイトルは『佐々木譲の世界 夜と弾丸』
わたしがメンバーである演劇制作ユニット、グループ虎と、現代制作舎によるプロデュース公演です。

上演作品は、
『新宿のありふれた夜』(角川文庫)
『笑う警官』(角川春樹事務所ハルキ文庫)
『荒木町ラプソディ』(『地層捜査』文藝春秋)
の3作。

これまでグループ虎公演でおなじみの俳優さんたちはもちろん、あらたに出演を快諾くださった俳優さんたちも、このいささか冒険的な公演に挑みます。

出演(50音順、敬称略)
天野舞衣子 石井ひとみ 上田ゆう子 絵理子 大槻修治 小河原真稲 斧原ゆう子 小幡美佳 香川耕二 風間舞子 梶雅人 川久保秀一 草薙仁 桑原なお 小金井宣夫 近藤弐吉 斉藤隆 寿大聡 白井真木 杉本茜 世理 仙波示右介 田村将志 鶴忠博 中野若葉 中村尚輝 長通克佳 西岡創 根本和史 林真之助 林千津子 林美月 樋口泰子 福森加織 藤村一成 藤田三三三 古川がん 真一涼 三月達也 盛岡弘一郎 夕貴まお 吉澤健

舞台化3作品集中公演のご案内_a0019702_19134372.jpg


チケット問い合わせは
現代制作舎
電話03-3482-3383
fax.03-3482-3387
e-mail:m08050999789@ezweb.ne.jp

前売り自由席4,500円指定席4,800円
2本自由席7,500円指定席8,100円
3本自由席10,000円指定席10,900円
# by sasakijo | 2012-09-29 19:14 | 広告
わたしの今年の重大ニュース。
順不同です。思いついたものを、おおむね時系列に。

・『婢伝五稜郭』(朝日新聞出版)刊行。単行本刊行前の昨年10月、グループ虎のプロデュース公演として、俳優座劇場で舞台化されました。

・3.11体験。その日わたしは札幌にいたけれども、いろいろな意味で。

・フィレンツェ・ロングステイ。『獅子の城塞』(小説新潮で連載)の準備で、フィレンツェのアパートメント・ホテルに4月末から5月末まで一カ月滞在。ここをベースに関係各所を取材。『密売人』の後半を書いたのも、この時期。

・小型船舶操縦免許一級取得。海洋冒険小説執筆準備の第一段階、船と海とについて体系的に学ぶべく、まずは尾道の専門学校で短期集中合宿を受け、免許を取得しました。わたしは外洋に出て行ける海の男です。

・『密売人』(角川春樹事務所)刊行。道警シリーズの第5弾。某警察本部の捜査情報漏洩と、関係した警部の自殺事件をヒントにした作品です。

・ヨーロッパ取材旅行。『獅子の城塞』取材のため、オランダ(ブレダ、ヘレブートスライス)、スペイン、ポルトガル取材。ポルトガルは今度の取材旅行が初めての国でした。

・『警官の条件』(新潮社)刊行。『警官の血』の続篇です。安城一族三代目の警察官・安城和也と、彼が「売った」先輩刑事・加賀谷仁とが再度対峙する物語。

・練習帆船あこがれで、5泊6日のセイル・トレーニングを受ける。海洋冒険小説執筆の準備、第二段階です。帆船を「身体で知る」ふたり目の日本人小説家となりました。ひとり目は小川一水氏。

・札幌大学での講演で、人生の秘密をカミングアウト。高校時代から二十歳のころにかけて、わたしは美術系クリエーター志望だったのでした。苦い断念の記憶なのですが、ようやくそのことを語れるようになりましたね。

・日本アレンスキー協会名誉会長就任。協会設立記念コンサートであいさつ。冗談で就いてしまったような名誉ポストですが、おかげでいつになく真剣に音楽を聴いた年ともなりました。

・『地層捜査』(文藝春秋、2012年2月刊行)の舞台化決定。オール読物に連載中に舞台化と決まり、かなり早い段階から制作準備に関わりました。お芝居への関わりがいっそう深くなっています。

・メインのデスクトップPCを入れ換え。Windows7環境に。わたしにとっては、やはりかなりのおおごと。

来年も、いい重大ニュースが続くことを期待して。
# by sasakijo | 2011-12-31 00:17 | 日記